Pain―8「・・・・ったく、よ・・・」悟浄が髪を掻き上げながら、「こんなガキに酷ぇ事しやがって・・・!」唇を噛みしめた。「悟空?」無言のまま、マントを外しはじめた悟空に八戒が声を掛けた。 「・・・桃花が悲しむだろ・・・」大桷の首をそっとマントでくるんだ。 「桃花を助け出したら、ちゃんと埋葬してやるんだ。桃花と一緒に。」 絶対――――――――必ず、桃花と一緒に。 固く秘めた決意と共に、大桷の首を祭壇に置いた。 「・・・そいじゃまーイキますか?」殊更、軽い調子で悟浄が促した。 「あったり前じゃんっ!!」 「当然でしょう。」 「・・・・行くぞ。」 皆が、踵を返そうとした時―――――――――――――「・・・助けになんか行くんじゃねぇぞ。」 良く通る声が教会内に響いた。 「・・・・・菩薩?」 紫暗の瞳が細められた。 そこには、教会の扉にもたれ掛かっている、菩薩の姿が在った・・・・ 「・・貴様・・・」三蔵の眉間に皺が寄る。 「とっととこの教会を出て、天竺に向けて出発しろ。」平然とした態度で言い放つ菩薩に、 「んなコト出来るわけねーだろっ!!」 「桃花を絶対に取り戻すかんなっ!!」 悟浄と悟空が噛み付き、 「・・・・笑えない冗談は好きじゃないんですよ、僕。」 「貴様にどうこう指図をされるいわれはねぇな。」 八戒と三蔵が静かに威嚇した。 「・・・お前ら・・・」グルリと一同を眺め、「このまま死ぬ事が、あの女の望みでも・・・か?」問いかけた。 「そりゃ・・どー言うコトよ?」「死ぬ事を桃花が望んでるって言うのか?!」 「嘘じゃねぇ。このままお前らが助けに行っても、あの女は・・桃花は、自ら死を選ぶぞ。」 菩薩の眼には真摯な光が宿っていて、とても嘘偽りを言っているようには見えない。 「どうしてです?何故、桃花が・・・」 三蔵が進み出た。 「・・・それはアイツの過去か・・・?」 ――――――――――三蔵達の過去は知っていても どれだけ親しくなろうとも 決して・・・語られることの無かった“桃花の過去"―――――――― 「・・・そうだ。」 菩薩の両の眼が、三蔵達を刺し通す―――――――――「お前らに、受け止められるか?」 「でなきゃ・・・逝かせてやれ。それが、桃花の為だ。」 ―――――――――そう言った菩薩の表情(かお)には・・・・・苦い笑みが浮かんでいた・・・・ pain―trap・・・・ ジャンル別一覧
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